第1話 - 空白の1年~yulect始動まで①~ -


2017年、春。

 

バンドが解散した。
理由は幾つかあるけれど、音楽が第一に優先できる環境ではなくなってしまったこと
(詳しいことは、また書ける時が来たら書きます。今回は控えておきます)

 

 

毎日の消費されていく生活に追われ
昼も夜も働いて、睡眠時間も減って

音楽のことを考える余裕は、まるで無かった。


もう音楽辞めたら?って誰なのかも分からない誰かに言われてる気がしてた。

 

相変わらず色々な人の音源を聴いてはいたけれど
何も心に響かないというか、しょせん住む世界が違うんだよな、ぐらいの考えだった。

 

 

 

 

 


2017年、夏。

 

バンドマン当時に親交のあった人とご飯に行った。
後のサポートメンバーの1人である。


久しぶりにバンドマンに会った。
大変そうだけど楽しそうだった。羨ましいなと思った。

 


やっぱり、今どうしてんの?とか、これからどうすんの?とか、そういう話になるわけで

"音楽、もうやらないの?"
"また歌ってほしいな"
"またバンドするんなら声かけてよ、手伝うからさ"

 


たったそれだけだけど、不思議なことに"やらなきゃ"と思った。
まだ必要としてくれている人がいるんだなって。
ありきたりな言葉かもしれないけど、そいつが軽はずみに言葉を選ばないことは分かってたから。


このままでいいのかって燻ってる感覚が湧き上がって来るようで。


そういう言葉が直接聞けるのを待っていたのかもしれない。
電話でもTwitterでもLINEでもない方法で。

顔を合わせなくても、ある程度の意思疎通が取れる時代だけど
直接的なものに敵うものは無いよなと改めて思った。

 


だから、悩む時間はほとんど無かった。

 

数少ないバンドマンの知り合いに声をかけ始めていた。
少ない時間の中で、もう一度自分と向き合って曲を書く日々が始まった。

 

 

 

 

2017年、秋。

 

弾き語りでライブをした。
半年ぶりのステージ。地元神戸のART HOUSEという場所だった。

 

普段緊張することはあまりないけど、久しぶりに緊張した。
と、同時にワクワクしてる自分もいてた。

 

久しぶりの曲、新しい曲、たった5曲だけど
バンドマン時代のこと、解散してからの半年間のこと、色んな情景が浮かびながら歌っていた。

 

けっこう大きめのミスもした。
でも、めちゃくちゃ楽しかった。
この先のこと、ぼんやりとしか考えていなかったけど、また歌いたいなって思った。

 

 

 

ちょうど時を同じくして、yulectが動き出そうとしていた。

色々なメンバーを探ったなかで二つ返事をしてくれたメンバーがいて素直に嬉しかった。

 

 

当然ながら、演奏が上手ければ誰でもいい、なんてわけではない。


ごく一部だけど、連絡を取っても返事が返ってこなかったり、練習当日にドタキャンしたりと色んな人間がいる。

そういう人が大成しなかったり長続きしないのはよく分かっているので
ああ、自分の見る目が無いんだなという戒めにもなった。

 

寧ろ技術に関しては本人の努力次第なので、より人間性を重視して声をかけた。

 

 


10月のある日に、曲を覚えてもらってきて初合わせをした。

 

俺とメンバーは、それぞれ面識はあるけれど一緒に合わせるのは初めて。
当然ながらミスもあるし、完璧とは言えないものだった。

でも何故だろうか。
自分の選択は間違っていなかったんだな、と思えた。

 

 

もっと良い演奏をしたい。
こいつらとバンドがしたい。
ステージに立ちたい。音源を作ってみたい。
このまま終わりたくない。

 


少しずつだけど確実に、これからやるべきことが見え始めたと思った。


(後編へ続く)